05 , 25
![]() | ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 八大天王 完全版 ウィン・ツァオ、ケント・チェン 他 (2002/10/25) パイオニアLDC この商品の詳細を見る |
[story]
連日雨が降り注ぐ、雨季の沸山。黄飛鴻の診療所、寶芝林は今日も今日とて忙しい。弟子達も総動員で多忙を極めていたある日、ひとりの男が従僕達を従えて寶芝林を訪れる。彼は、黄飛鴻に会いにきたといい、朝廷に仕官するつもりはないかと飛鴻を誘った。
飛鴻はやんわりと男の誘いを断ったのだが、男は清朝の親王だった。自らの誘いをはねのけた飛鴻を忌々しく思った親王は、国中はおろか近隣諸国から各武術に秀でた手練れの暗殺者を8名集め、飛鴻に戦いを挑んで亡き者にするようにと命じる。
一方寶芝林では、飛鴻の叔母、十三姨が欧州へ一人旅に行くと言う。お互いに想い合ってはいるものの、飛鴻は寶芝林の運営が忙しいうえ、いまひとつ叔母への気持ちの表し方がわからない。そんな飛鴻に、十三姨の方が微妙な苛立ちを感じていたのだ。
雨季が終わったら一緒に行こう、と言った飛鴻に対し、いますぐに出発すると十三姨。そう言われてしまうと飛鴻にはどうすることも出来ず、飛鴻は沸山の港で広州から船旅へと旅立つ叔母を見送った。
ところが叔母を見送るため飛鴻が寶芝林を留守にしていた間に、親王が雇った8名の暗殺者たちが押しかけてきて、留守を預かっていたガイが怪我を負ってしまう。叔母が旅立って行った後、戦いは避けられぬものとなり、飛鴻は8名の武術家と1対1の異種格闘技戦に望まざるを得なくなり……
[comment]
うおおおお! ストーリーが書ききれん!
……管理人いちばんのお気に入りのお話です。いやいやいや、ほんともうこの『八大天王』は見所があまりにも多すぎて……!!!
まずは飛鴻と十三姨との相変わらずな関係。
劇場版のロザムンドさんからスイッチしたマギー・シュウの十三姨は、文卓君の若さという要素も手伝って、もっとはっきり歳の離れた飛鴻の叔母さん、という雰囲気に感じます。ロザムンド十三姨は、ともすれば飛鴻の妹といっても頷けてしまうほど、可愛らしくて、どこかおっとり柔らかな空気の持ち主でした。でもこちらの十三姨は、すっきりとした美人さんで、気が強く、我も強く、新聞社の女社長で自立している女性です。
劇場版では天地争覇で婚約をした二人でしたが、TVシリーズを観てみるに、まだまだ二人はそんなところまでいってなさそうな?
飛鴻が戦いに巻き込まれている間、イーさんは留守で、海外からときどき手紙を寄越します。ちょっとした強がりなんかがつづられた、叔母からの手紙に、嬉しそうに目を通す飛鴻。
追いつめられて苦しくなりゆく状況を、遠く離れてしまった彼女からの手紙が救い、飛鴻の心を支え、彼女への想いが飛鴻を死地から生還させる力になる……。
すべてが終わって、帰国したイー叔母を出迎えながら抱き締める飛鴻の、男性として彼女のことを想いつつ、はにかみながら甘えもする子供を思わせる表情は、文卓君の飛鴻ならではなんじゃないでしょうか。
どっちにしてもくすぐったさは健在で、観ているこっちがむずがゆい(笑)。より叔母さんと甥っぽく二人が見えるぶん、劇場版よりこっちのほうが禁断の恋愛風味7割り増し(当社?比)。
本編パートでは、なにより父に泣きすがって雨の中濡れながらくずおれる、飛鴻の姿が特筆すべきところであります。
暗殺者と対峙することになった飛鴻は、やがて策略で毒を盛られ、戦うことが出来なくなってしまいます。残された試合を弟子達がひとりひとり受けることになるのですが、弟子達はそれぞれ必死の戦いを強いられることとなり、万策尽きたかと覚悟したところへ、降りしきる豪雨の中、父帰宅。
「父上……!」
劇場版のあの最強の飛鴻師父なら、まず間違いなく、 あ り え ね え だ ろ ! と突っ込みたくなる展開なんですが。
いいんです!!!!! これまた文卓ならではの黄飛鴻じゃ!!! すみません……非常にもうしわけなくすみません。ああでもでも! 毒に犯され苦境に陥り、絶望の淵に立たされて、もはやこれまでかとひとり懊悩に苦しむ黄師父と来た日には。
う、う、美しい……!!!!!
沈痛な面持ち。ほつれた辮髪。無力感の滲む表情。てっぺんからあしもとまで、そのお姿、むしろいっそ激しく妖艶です! 師父!
毒でも一服盛らない限りはどんな相手が来ようとも、とてもとても負けてくれそうにはありません、と思わせるあたりはさすが沸山の黄飛鴻。
しかも毒を盛られたからには、今度こそ敗北を喫するのか!? いかな師父でも大ピンチだ!……と思いきや。毒のために技と力の加減が上手く出来なくなれば、ピンチどころか一撃必殺。対峙した相手はまさに瞬殺の憂き目に遭うという無茶苦茶っぷり。……こわ!!!!!
リンチェイのパロディ版師父(→『烈火風雲』)も、敵をぶちのめす際、華麗な酔拳(笑)を披露しつつ「酔うと力の加減が出来なくなるから飲酒は父から厳禁されてるんだ!」てなことをいいますが……危険です。非常に危険です。この人には酒も毒も与えてはいけません。
TVシリーズは総じてアクション活劇というよりドラマや心理描写に重点を置かれているようですが、この作品は、全体を通しての空気感や演出も秀逸でした。沸山の雨季の雨の激しさや、流れる水、雨と雨の合間の夕焼け、決戦の舞台となる火葬場の独特な風景など、そういった映像が非常に美しく綺麗です。
鬼脚、ウェン、ガイ、フー、が揃って、師匠と仲間を背中に庇い、必死の血戦に臨んでいく展開も劇場版では観られません(ソーはやっぱり戦力外)。
鬼脚と戦って脚を折ったムエタイの使い手を、寶芝林に運び込んで、弟子ども総出で無理矢理治療を施したうえ、見事に懐柔までしてまうあたりは、そもそも鬼脚君が黄一門の仲間に加わることになったあの『天地争覇』のエピソードをなぞるようで楽しい。こういうとこだよ寶芝林って(笑)。
飛鴻を絶体絶命まで追いつめる敵の首魁は少林寺から破門の烙印を押された武僧で、鏡花和尚というのですが、彼もまた奇妙に色気のあるキャラクターでした。びっしり隙なく重ね着をしているはずなのに、からだにまとわりつくような白と黒の僧衣なんかがかえって妖艶。
少林寺の僧侶だった水月。水月の精神を蝕んでいった復讐鬼の鏡花。解放を願ったのは水月で、飛鴻は、兄弟弟子でもあった水月の願いを叶えるために、その身に巣くう鏡花と命がけで戦ったのかもしれません。
あれは水月だったのか……それとも鏡花だったのか……。
ラストシーンに被る飛鴻のモノローグが耳の奧に残ります。







